高齢化が進む日本において、認知症への対策が喫緊の課題となっています。特にアルツハイマー病は、認知症の主な原因とされており、その予防と治療にはまだ十分な方法が存在しません。
一方で、中年期の肥満は認知症のリスク要因とされていますが、高齢期の肥満は認知症の発症を防ぐ可能性もあるとの報告があります。この肥満のパラドックスは、認知症だけでなく、循環器疾患やがんなどでも注目されています。しかし、その作用機序はまだよく分かっていません。
この研究では、アポリポタンパク質E(APOE)遺伝子の遺伝子多型と肥満パラドックスの関連について調査されました。その結果、肥満は初老期の認知機能の低下と関連しており、特にAPOE遺伝子のE4多型を持っていない人々やE2保因者において顕著であることがわかりました。また、E4保因者では認知症の発症とは負の相関が見られ、その効果にはアミロイドβやタウなどのアルツハイマー病理の蓄積低下が関連していると示唆されました。
このように、高齢期の肥満に関しては認知機能の低下を促進する一方で、認知症の発症を抑制するという「認知症における肥満パラドックス」が示唆され、その作用はAPOE遺伝子型によって異なることが明らかになりました。
&Buzzとしては、この研究成果が今後の肥満や認知症の予防・治療につながる可能性を秘めているとみています。日本人のコホート研究による追試が必要ですが、APOE遺伝子検査の普及を予想する上でも重要な結果であると言えます。これからも研究の進展を見守っていきたいと思います。
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