男性のテストステロンの分泌量は、70歳まではかなり安定しているが、その後は減少し始めることが新たな研究で示された。
「高齢者でのテストステロンの減少は正常な老化のプロセスの一つなのか、それとも、高齢男性が直面するさまざまな健康問題を反映したものなのか」という疑問が浮上する。
この研究結果を報告した西オーストラリア大学医学部教授でオーストラリア内分泌学会元会長のBu Yeap氏らは、これらの疑問に対する答えは、いずれも「イエス」ではないかとの見方を示し、肥満や高血圧、糖尿病のほか、婚姻状況までもが、加齢に伴うテストステロン減少の要因になり得るとしている。
この研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に2023年8月29日掲載された。
テストステロンの減少は、脆弱性や倦怠感を増大させるほか、性機能の衰えや筋肉量の減少、糖尿病や認知症のリスクを上昇させる可能性がある。
加齢に対してできることはないが、生活習慣の是正が男らしさの維持に役立つ可能性はある。
Yeap氏らのグループは今回、オーストラリア、ヨーロッパ、北米で2019年7月までに実施された11件の研究のデータを解析した。
解析に組み入れた対象者は合計2万5,149人の男性で、いずれの研究でも、質量分析法と呼ばれる方法で対象者の総テストステロン値が複数回にわたって測定されていた。
70歳超の男性では、テストステロンの平均値が70歳以下(18〜70歳)の男性よりも低いことが明らかになった。
ただし、解析からは、テストステロンの分泌を促す黄体形成ホルモン(LH)の濃度が70歳以降に上昇することも示された。
さまざまな要因が70歳以降のテストステロン値の低下を促していることも明らかになった。具体的には、心疾患や喫煙歴、がん、糖尿病、高血圧、過体重または肥満(高BMI)、運動不足、既婚が要因として示された。
結婚しているか長期にわたるパートナーがいることが、高齢男性でのテストステロン値の低下に関連している点について、Yeap氏は、「結婚して家族のいる男性はストレスが多く、そのことがテストステロン値の低下をもたらしている可能性がある。ただし、われわれの研究は、この結果の詳細を明らかにできるようデザインされたものではなかった」と話している。
その上でYeap氏は、さまざまな社会人口学的要因や生活習慣要因、医学的要因が男性のテストステロン値に影響を与えているということが、今回の研究から得られた主な知見であると説明。
「医師はこれらの要因を考慮した上で男性のテストステロン値の検査結果を解釈すべきだ。検査結果が予測値よりも低い場合、それは必ずしも年齢が原因であるわけではなく、これらの要因が影響している可能性も考えられる」と付け加えている。
米国心臓協会(AHA)の元会長であるRobert Eckel氏は、テストステロンの分泌動態は、解明が進むにつれ「どんどん複雑になっていくようだ」と話す。
Eckel氏は、テストステロン値の低下をもたらすさまざまな要因を正確に把握するのは難しいとしながらも、2つの重要な潜在的要因として、テストステロンを全身に運ぶ働きを担っているLHと性ホルモン結合グロブリン(SHBG)と呼ばれるタンパク質を挙げている。
テストステロンの減少は、究極的にはQOLの低下につながるが、それに対して高齢男性は何をすべきなのだろうか。
Eckel氏やYeap氏は、テストステロン補充療法の適切さや有用性について医師に相談するべきだと主張している。
Yeap氏は「テストステロンを用いた治療は、明確な医学的理由がある場合にのみ、必ず医学的管理下で実施する必要がある」と強調している。
&Buzzとしては、この研究結果が男性の健康に関わる重要な知見であり、加齢に伴うテストステロンの減少は様々な要因によって引き起こされる可能性があることが示唆されています。男性は適切な生活習慣の維持や医師との相談を通じて、自身のテストステロン値に注意を払い、健康な生活を送ることが重要です。
コメント