2023年10月2日(月)
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帯状疱疹(ほうしん)は、最近注目されている病気です。ワクチンは高額で任意接種ですが、助成制度を導入する自治体も増えています。しかし、支援のばらつきは大きく、現状は混乱しています。
女性(66)は、数日間左半身に痛みがあり、その後尿に苦労するようになりました。お尻に発疹が現れ、最初は帯状疱疹だとは思っていませんでした。最初は婦人科を受診しましたが、すぐに近くの皮膚科に行きました。処方された薬を飲み、症状は2日ほどで治まりましたが、強い痛みは1カ月ほど続き、現在もピリピリと痛みます。彼女は後悔しています。「帯状疱疹だと気づかず、忙しくて先延ばしにしてしまいました」と。
自営業の女性(63)は、頭の後ろが痛み始め、10日後に発疹が現れました。彼女も強い痛みが1カ月ほど続き、現在も冷えると痛むと言います。「周りでも帯状疱疹になった人が多くて驚きました」と話しています。
帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)にかかった後、ウイルスが神経に残り、免疫力が低下すると皮膚に症状が現れる病気です。ウイルスが神経を伝わる際に炎症が生じ、強い痛みが出ます。加齢や過労、ストレスなども引き金となります。引き起こされる後遺症には神経痛、角膜炎、難聴、顔面神経麻痺などがあります。
済生会横浜市東部病院皮膚科の渡辺絵美子部長代理によると、発疹が現れてから5日以内に1週間の抗ウイルス薬を服用することが治療法です。神経痛が残る場合には痛み止めなども使います。「通常、帯状疱疹は神経に沿って現れますが、どこに現れるかはわかりません。全身に発疹が現れる場合は入院治療が必要で、まれに髄膜炎が起こることもあります」と説明しています。
宮崎県で行われている世界最大の帯状疱疹に関する疫学調査「宮崎スタディ」によると、80歳までに3人に1人が帯状疱疹になると言われています。愛知医科大の渡辺大輔教授(皮膚科)によれば、「宮崎では2009年以降10年間で患者数が1.38倍に増えました」と述べ、男性よりも女性の方が発症率が高いとのことです。
増える患者の一因として、14年から水ぼうそうワクチンの定期接種が始まったことが挙げられます。これにより、水ぼうそうウイルスを抱える人との接触が減り、「ブースター効果」が得られにくくなったのです。50歳以上の発症が多いですが、20~30代でも広がっています。米国でも95年から水ぼうそうの定期接種が始まり、同様の傾向が見られます。
また、米国で行われた大規模研究では、50歳以上で新型コロナウイルスに感染した人は、感染経験のない人に比べて帯状疱疹のリスクが約15%高いことが示されました。新型コロナで入院した患者では、約20%高かったそうです。ただし、渡辺教授は「他の大病でも、ウイルスが再活性化して帯状疱疹が発症することは珍しくありません。新型コロナは特別なものではありません」と補足しています。
予防のためには、50歳以上を対象としたワクチンがあります。若年世代とは異なり、後遺症が重くなる可能性が高いためです。生ワクチンが16年に承認され、不活化ワクチンが18年に承認されました。
ワクチンは任意接種かつ全額自己負担ですが、東京都は23年度予算に約7億8000万円を計上し、助成制度を始めました。この制度は、ワクチン代の助成をする自治体に対して助成額の2分の1(上限あり)を補助するものです。
全国保険医団体連合会は、全国の自治体の助成状況を調査しています。その結果、助成が広がったのは23年4月からです。ただし、助成にはばらつきがあり、8月24日時点で京都、大阪、広島、徳島、高知、佐賀、長崎の2府5県ではどの自治体も助成制度を確認できなかったそうです。担当者は「自治体間の差をなくすため、国に定期接種化を求めている」と話しています。(本橋由紀)
本橋由紀
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