大阪とシンガポールの院外心停止患者の蘇生戦略の違いについて
近年、心停止患者の蘇生に体外式膜型人工肺(ECMO)を使用するECPR(Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)戦略が注目されています。しかし、このECPR戦略は地域によって実施状況が異なります。例えば、大阪では初期波形が電気ショック適応の心停止患者の30〜60%にECPRが行われていますが、シンガポールでは1%未満です。
岡田遥平 医学研究科研究員、石見拓 同教授、および Marcus Ong シンガポール・デューク-NUS医科大学教授らの共同研究グループは、この違いに着目し、2つの地域での初期波形が電気ショック適応の院外心停止患者の転帰に違いがあるかを検証しました。
この研究では、大阪の院外心停止のデータベース(Osaka-CRITICAL study)から導出された機械学習モデルを、シンガポールのデータベース(SG-PAROS)に登録されている初期波形が電気ショック適応の院外心停止患者1,789人に適用しました。病院到着時に心停止から回復した患者では、観察された良好な神経学的転帰は大阪のデータに基づく予測と同程度でした。一方、病院到着時に心停止が継続していた患者の転帰は大阪のデータに基づく予測よりも低いことがわかりました。
大阪とシンガポールの院外心停止患者の転帰に違いがあることが示され、蘇生戦略が地域に与える影響を示唆しています。
この研究結果は、京都大学と国立シンガポール大学Duke-NUS Medical Schoolの共同研究であり、両地域の病院前救急医療の特徴を生かし、院外心停止という世界共通の課題に対する治療戦略を検討しました。
&Buzzとしては、ECPRを含めた地域の救急医療システムの最適化を応援していきたいと思います。
この &Buzzニュースは、Kyoto-u.ac.jpのニュースをAndbuzzが独自にまとめたもの。