読売新聞の医療・健康・介護サイト
2023年9月22日
医療・健康・介護のニュース・解説
新型コロナウイルス感染症が、感染症法上の「5類」に移行した2023年、国内には久しぶりに「夏らしい夏」が戻りました。帰省や旅行などでおいしいものをたくさん食べたという方も多いと思います。「食欲の秋」を前に、食べ過ぎると心配なのが肥満ですが、肝臓がんの発症リスクを高めるといいます。どういうことなのか、東京大学医学部准教授(消化器内科)の建石良介さんに聞きました。(聞き手・染谷一)
――肥満が、がんの原因となるというのは意外です。
肥満は、大腸がんや膵臓がん、肝臓がんの原因になり、糖尿病は、肝臓がんのリスクを高めます。どちらも背景にあるのはメタボリックシンドロームです。
――肝臓がんの原因は、ほとんどがB型やC型といった肝炎ウイルスなのではないですか?
少し前までは90%がウイルス性肝炎からの発症でした。しかし、最大の原因だったC型肝炎は、薬剤治療でほぼ治るようになり、その構図は大きく変化しました。肝臓がん全体の患者数は減少傾向にありますが、肝炎ウイルスが原因ではない患者は、過去20年で5倍ぐらいに増えています。多くは、肥満が関係した「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」が要因です。脂肪肝は、肝臓に脂肪が多くたまった状態で、お酒をあまり飲まなくても進行するのがNASHです。
――なぜ、脂肪肝が、がんの原因になるのですか?
肝臓に脂肪がたまると炎症が起き、肝臓の細胞が硬くなる「線維化」が起こったり、細胞ががん化したりします。ちょっと専門的な話になりますが、脂肪細胞はエネルギーを蓄える以外に「アディポカイン」という一種のホルモンを分泌します。食べ過ぎてメタボになると、アディポカインのうち、炎症を促進する「悪玉」が増え、炎症や発がんを抑える「善玉」は減少します。慢性的に炎症が起こる状態になると、さまざまながんが起こる危険が高まります。また、肥満になると腸内環境が変化して細菌のバランスが乱れます。食事をすると、腸管の血液は肝臓に集まります。腸内で発生した、体に悪影響を及ぼす物質の処理を肝臓が請け負うことになるため、細胞が傷めつけられてがんを発症するわけです。
――脂肪肝の人はどのくらいいますか。
人間ドックのデータによると、脂肪肝の人は増加しており、男性の約30%、女性の15~20%に見られます。飲酒も脂肪肝の原因になりますが、1人あたりのアルコール摂取量は減ってきているため、NASHの前段階である「NAFLD」の人が増えていると考えられます。NAFLDは、脂肪が肝臓の細胞に沈着する状態です。この段階なら発がん率は年0.1%未満ですが、炎症が伴うNASHに進行すると、約10倍に跳ね上がります。NAFLDの状態から、10~15%がNASHになると考えられています。ただ、NAFLDの中で、どういう人がNASHになるかは完全には分かっていません。遺伝的要因が関わっている可能性も指摘されています。
【関連記事】
知りたい!の一覧を見る
知りたい!
知りたい!
知りたい!
知りたい!
知りたい!
お薬の製品名やメーカー名、疾患名、薬剤自体に記載されている記号等から探す事が出来ます。
「心や体の悩み」コーナーはこちら
見出し、記事、写真の無断転載を禁じます。
感想:
&Buzzとしては、肥満が肝臓がんのリスクを高めることが意外でした。肥満は大腸がんや膵臓がんでも原因となることがわかり、糖尿病も肝臓がんのリスクを上げます。特に肥満が関係した「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」が肝臓がんの原因となることが多いようです。脂肪肝になると炎症が起こり、細胞ががん化するリスクが高まります。食べ過ぎてメタボになると炎症を促進するホルモンが増え、肝臓の細胞が傷つけられやすくなります。また、肥満になると腸内環境も変化し、細菌のバランスが乱れ、がんの発症リスクが高まります。人間ドックのデータからも脂肪肝の人が増加しており、男性では約30%、女性では15~20%に見られます。NAFLDからNASHに進行すると発がん率も約10倍に跳ね上がります。今後は予防や早期発見に取り組み、肥満によるがんのリスクを少しでも減らしていく必要があると感じました。見守っていきたいと思います。
この &Buzzニュースは、Yomiuri.co.jpのニュースをAndbuzzが独自にまとめたもの。