日本で高齢化が進んでいる中で、認知症への対策がますます重要になっています。特にアルツハイマー病は深刻な問題ですが、これまではまだ十分な予防・治療策がなかったです。
一方、肥満は中年期における認知症のリスク因子とされていますが、高齢期の肥満は認知症の発症を防ぐ可能性があるという報告もあります。肥満の有益な効果は、認知症だけでなく、循環器疾患やがんなどでも注目されており、「肥満パラドックス」と呼ばれています。
アポリポタンパク質E(APOE)遺伝子の遺伝子多型は、アルツハイマー病の遺伝的な危険因子とされています。E4多型はアルツハイマー病のリスクを高める一方、E2多型はリスクを低下させると考えられています。
このような背景から、国立長寿医療研究センターの研究グループは、肥満パラドックスとAPOE多型の関連について調査しました。2万人以上の健常人や認知症者を対象に調査し、肥満と認知症の関係、さらにAPOE遺伝子型との関連を解析しました。
その結果、初老期の肥満は認知機能の低下と関連があり、特にE4多型を持たない人、特にE2保因者において顕著でした。一方、E4保因者では認知症の発症と肥満が負に相関しており、アルツハイマー病理の蓄積低下が関連している可能性も示唆されました。
この研究結果は、「認知症における肥満パラドックス」を示唆し、肥満の作用がAPOE遺伝子型によって異なることを明らかにしました。さらに、肥満がアミロイドβ蓄積を抑制する効果も動物実験で報告されており、今後の治療薬開発につながるかもしれません。
&Buzzとしては、この研究結果は非常に興味深いです。肥満が高齢期の認知症の発症を防ぐ可能性があるという肥満パラドックスの存在は注目されていますが、APOE遺伝子型との関連性を明らかにしたこの研究は一歩先を行っています。
今後は、日本人のコホート研究など追試が必要ですが、APOE遺伝子検査が普及することでさらなる研究成果が期待されます。