10月10日のNHK『クローズアップ現代』は、「3人に1人が激痛!? 増加する帯状ほう疹 そのワケは?」がテーマ。帯状ほう疹を発症する日本人が増加するなか、以前に比べ20~40歳に多く発症し、50代では男性より女性に多いとか。その謎を、世界が注目する日本の帯状ほう疹の大規模調査で明らかに。さらに治療しても後遺症が残ったり、失明や難聴など深刻な状態に陥る人もいる病気です。連載「女性の病気SOS」を再配信します。
【表】皮膚症状と痛みの自然経過
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体の左右どちらかに神経痛のような痛みを感じます。1週間ほどすると赤みを帯びた皮膚が盛り上がり、小さな水疱が現れ、痛みを感じる神経に沿って広がります。治療をしなければ5日間くらい水疱が増え続け、その後乾いて、2~3週間で治ります。皮膚の症状は、水疱の群れが1~2ヵ所の軽いものから、神経に沿って皮膚全面にびっしりできるものまで。全身各所に出る可能性があります。
痛みを伴った皮膚症状が特徴で、焼けるような、とか突き刺すような、など痛みはさまざま。また、知覚が鋭くなったり、鈍くなったりする知覚異常を伴うことがあります。すべての年齢で起こりますが、50代後半から高齢者に多い病気です。特に高齢者の場合、帯状疱疹後神経痛(PHN)といって、痛みが残ってしまうことも。そうなると治りにくいです。
水痘(水ぼうそう)を起こすヘルペスウイルスが原因です。水痘にかかった後、ウイルスは知覚神経の根元の細胞に潜伏しています。免疫が低下すると、このウイルスが再活性化して、末梢神経を伝わって皮膚表面に出てくるため、その神経が支配する領域の皮膚に痛みを伴う症状が出てくるのです。
免疫の低下には2つの要素があります。1つは体力そのものが落ちているケース。過労や睡眠不足、精神的なストレスは免疫を低下させます。そして高齢になれば誰でも免疫は低下します。また、がんの治療で使う抗がん剤や膠原病でステロイドを投与されている場合なども、帯状疱疹を起こしやすくなるのです。
もう一つは、水痘ウイルスへの免疫低下です。以前は水痘、つまり水ぼうそうにかかる子供の親世代や幼稚園の先生などは、水痘ウイルスの感染機会が多く、免役が随時追加されて帯状疱疹になりにくかったのですが、2014年から1歳児全員に水痘ワクチンを接種するようになってから水痘の流行が無く感染機会がなくなり、親世代の帯状疱疹が急に増えてきました。
このため、かつて帯状疱疹は生涯に一度しかかからないと言われていましたが、今や様々な原因による水痘ウイルスへの免疫低下により、生涯に2回以上かかる人や、4~5年で再発する人が増えてしまったのです。
早期治療が肝腎。ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬は、最初に水疱ができ始めてから72時間以内に飲むと効果が期待できます。増殖を抑えることで、神経や皮膚の細胞破壊を防ぐ。それによって症状の広がりを抑え、PHNを避けることができます。
痛みには消炎鎮痛薬など。神経の破壊が進みやすい高齢者には、PHN予防の効果もある三環系抗うつ薬を処方することも。うつ病とは関係なく、独特の鎮痛効果があります。また、外用薬も使います。
皮膚に症状が出ている時は、冷やさずに温めること。冷やすと血管が収縮し、神経に栄養が行き渡らず細胞の破壊が進むからです。水疱が出ていても入浴はお勧め。体が温まると痛みも軽減します。ただし、こすらずにやさしく洗ってください。
3ヵ月を過ぎても痛みが残るPHNは、神経が傷ついたことによる痛みと、痛みの記憶による心因性の痛みが重なったもの。興奮した神経を鎮める神経障害性疼痛薬、三環系抗うつ薬などのほか、強い痛みには麻酔薬系の痛み止め(弱オピオイド薬)などの薬で症状をやわらげます。
また、ご家族や周りの皆さんは、皮膚の症状が治ってからも痛みが残っていることを理解し、よく話を聞いてあげてください。それだけでも安心し、実際に痛みが軽くなることがあるのです。
50歳を過ぎるころから徐々に免疫が低下し、帯状疱疹の危険域に入ってきます。しかし、水痘ワクチンという手段で高い予防効果を得ることができます。アメリカでは、60歳になったらワクチン接種が勧められています。日本では、帯状疱疹の予防にワクチンを打つという考え方が十分に浸透していません。帯状疱疹を専門に診る皮膚科の診療所や総合病院で相談すれば、自費診療で接種できます。
日々の生活で言えば、免疫を低下させない健康な生活を心がけるということになりますが、体調を崩したり、ストレスにさらされたりすることは避けられません。そこで、帯状疱疹にかかっても軽症で抑え、後遺症を予防するという観点からも強調しておきたいのが、早期治療の重要性です。
皮膚の症状に先駆けて痛みだけが数日続くことがあり、この段階だと帯状疱疹と気づきにくいのです。体の片側に発疹が現れれば帯状疱疹だとわかるのですが、最初の症状が頭痛や心臓の病気を思わせる胸の痛み、腹痛、腰痛、歯痛、眼や耳の痛みということもあります。片側にピリピリした痛みや違和感があったら、帯状疱疹の可能性を疑い、皮膚の症状が出たらすぐに皮膚科を受診してください。
帯状ほう疹を特集したNHK『クローズアップ現代』の番組内容は非常に興味深く、病気に関する知識を深めることができました。&Buzzとしては、水痘ワクチンの予防接種の普及が求められると感じました。特に高齢者に対して免疫低下が起こりやすいため、予防接種によって病気リスクを軽減することが重要です。また、早期治療の重要性も再確認しました。&Buzzは、帯状疱疹の研究やサポートに関心を持ち、患者さんの治療と予防に向けての取り組みを応援していきたいと考えています。
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